レディエッセ明日へのステップ
日本の医療現場にはあまりにも多くの「不思議」が横たわっている。
根拠のはっきりしない思い込みや迷信が代々引き継がれ、忙しい医療関係者は、ただただそれを実践することに追われている。
もっと広い目、もっと大きな立場で、もっとゆったりとした心から、医療が患者にどのように役立っているのかを見る人が必要だ。
本当は医療ジャーナリストが果たさなければならない務め、と私は自戒している。
しかし、残念ながら日本の医療ジャーナリストの多くは情報企業に属し、利益を重視する複雑な社会に組み込まれ、右往左往している。
だが、世の中はよくしたもので、代わりにちゃんとJ・N先生がいらっしゃる。
半年以上に及ぶ米国の臨床医としての経験からの指摘はジャーナリスト以上に的確だ。
欧米の医療が何もかもいいわけではない。
しかし、絶対的な強みは合理性、科学性である。
とくに科学の産物である薬の扱いについて、日本の医師や患者はもっとN先生に、つまり欧米に見習わなければならない、と思う。
欧米では安くてよく効き、副作用の少ない薬が最も歓迎され、多く売れる。
非科学的な制度下の日本では、効き目も副作用もまだよく分からないが、滅法高い「画期的新薬」が飛ぶように売れる。
保険制度の影響が大きい。
今は大多数の国民の医療費の自己負担は3割だが、かつては2割、1割、ゼロだった。
どうせ税金(保険料)で払うのだから直接ふところは痛まないと、医師も患者も薬の値段には無頓着だったから、高い薬の方が売れる。
安い薬は効かないかのような錯覚がある。
この本のテーマの「ジェネリック薬」は同じ成分でありながら、先発のブランド品でないために安く売られる薬のことだ。
欧米では薬の半分ほどがすでにジェネリック薬になっているが、高い薬を珍重する日本では、患者の要求もあまりないし、医師はほとんど無関心なのでジェネリック薬についてほとんど知らない。
普及しないのは、当たり前だが、N先生は医療費全体の節約と家計負担を軽くするためにもっとジェネリック薬を活用しようと呼びかけている。
デパートには、「M」のコーナーがある。
「百円ショップ」もあちこちにある。
中国や東南アジア製の安い製品も日本の著名企業の製品とそんなに変わらない。
医療は他の分野に比べるとたいてい遅れているが、「M」や「百円ショップ」の薬版がジェネリック薬というわけだ。
薬の値段の大半は、実は研究開発費が占めている。
特許切れで別の製薬企業が作れるようになったジェネリック薬は開発費が極めて少なくて済む。
日本の保険制度では薬は公定価格が決まっており、ジェネリック薬は先発薬の2割から7割となっている。
普及すれば、値段はもっと安くなるだろう。
「ニッポンは、薬の数が世界1」ということをご存知ですか?しかも、薬代の医療費を占める割合が約2割という、世界でも高い比率だという事実をご存知ですか?最近は、病気でもないのに、クスリを飲んでいる人が増えました。
ビタミン剤、サプリメント、栄養剤に漢方薬…と、日本人ほど薬が好きな国民はおそらく世界中を探してもいないでしょうね。
たとえば、具合が悪くて病院で診てもらうと、血圧が高いことがわかったとします。
血糖値やコレステロール値も少々上がっています。
するともう医者は、「血糖値を下げる薬、コレステロール値を下げる薬、ついでに、降圧剤に胃薬まで」処方します。
患者さんもたくさん薬が出ることで安心します。
どんなにたくさん薬をもらっても、「自分が薬代を全額払うわけではないし、保険から支払われるから」と薬代に関していままで無関心な人が多かった。
また、「薬はもらえるだけもらっておいて、服用するしないは自分の判断で」という1番困った患者さんだっている。
N会副会長のM・U氏の話では、「まったく飲まないのも含めて3割の患者さんが、医師の処方どおり薬を飲んでいない」という調査結果もあったといいます。
アメリカではそうはいきません。
アメリカの臨床薬理医のレポートによると、「4種類以上の薬を服用している患者さんの半数以上に副作用が見られる」という。
裏返して言えば、少なくとも4種類以上の薬の処方は避けるべきだと警告しているのです。
そのため、私が拙著「G」(S社刊)に指摘したように、「ストレスになるような問題をかかえていたら、まずそれを解消すべきです。
それと、体重をあと何キロ落とすといいですよ。
しばらく様子を見て、薬を服用するのはそれからでも遅くないでしょう」と、できるだけ薬に頼らないように指示します。
高血圧症、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病は、しばしば生活態度を改善することで治る場合があるからです。
同じことを日本人の患者さんに指示し、薬を出さないとどういう反応をするか。
「具合が悪いから診察してもらったのに薬も出さないで、また来いという。
あんな薮医者なんか二度と行くものか」とつむじを曲げるでしょうね。
今回は「薬漬けニッポン」をたたこうという話ではありませんのでこれくらいにしますが、日本の医療現場でどれほど薬が大きなウェイトを占めているかはおわかりいただけると思います。
まさに、国民総クスリ依存症に陥っているのです。
私は、医療に携わる医者として、医療がなによりも患者さんのためになっているかどうかを考え、つねづね医療費の適正価格とは何かを危恨してきました。
サラリーマン現役の方は、そうでなくとも給与削減やリストラに怯えるいま、医療費増額は厳しい家計をますます直撃します。
まして、年金生活を余儀なくされるご高齢の患者さんにとっては、これは手痛い負担です。
1回2回の受診で治せる病ならまだしも、重篤な多臓器の病気を抱える方の長期間にわたる負担は、相当な金額になることでしょう。
何とかしなくてはなりません。
容態の悪い患者さんが身体も家計もぼろぼろになっていくのを食い止めたい。
また疲弊した日本経済がますます財政難病を患うのをもう黙って見ているわけにはいきません。
そこで、患者さんが医療費の自己負担額を少しでも低減できる方法、ひいては国民医療費を支える厚生労働省の支出、つまりは税金の無駄遣いを少しでも軽減する方法をお伝えしようとここを書くことにしました。
なぜ医者である私が、患者さんが払う、ひいては国の税金で病院に払う医療費のコスト意識を問題にするのか。
その理由は、長年にわたるアメリカでの臨床経験からいうと、アメリカ人は自分の支払う医療費、薬剤費が高くないか、必ずといっていいほどチェックするからです。
そして、「同じ成分、同じ効き目、そして品質も同じ薬で、新薬より安い薬があること」をよく知っています。
「安い薬をください」と処方箋を書く段階でドクターに訴える、もしくは薬剤師に出してもらう。
先進国ではこれが当たり前であり、患者さんの共通意識になっているのです。
帰国して、驚きました。
日本の患者さんは、ご自分の医療費、薬剤費にあまりにも無頓着で、高騰する医療費に対して他人事のように捉えている。
その安い薬(日本では平均すると約半額になる)の存在すら知らない。
ほんとうにびっくりしました。
同じ効き目で半額の薬を「ジェネリック医薬品」といいます。
なにやら聞きなれない言葉ですね。
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